最近、イノシシが田畑に出没し、農作物を食い荒らす被害がニュースで話題になっています。農林水産庁の調査によると、令和元年の被害額は約46億円(対前年2%減)にも及ぶそうです。一方で、猪は多産であることから「子孫繁栄の象徴」とされています。また、猪の赤ちゃんは「うり坊」と呼ばれ、その姿を模した「亥の子餅」は平安時代から親しまれています。この亥の子餅は源氏物語にも登場する由緒あるお菓子で、茶道の炉開きにも使われるお菓子です。
ところで、陰暦10月初めての亥の日を祝して食べる丸餅(関東ではのし餅)があります。白・赤・黒の3色の小さな餅に、しのぶなどの添え花をして檀紙や奉書で包み、紅白の水引を1本又は2本かけたものです。宮中の行事菓子「お亥猪包み」と言われるものですが、元来は食べるものではなくお守りのようなものだったとようです。それがいつしか民間に伝わり、亥の日に餅をついて神仏に供えると共に、この餅を食べると無病息災が叶うという風習として伝承されてきました。亥は猪にも通じるため、猪の〝多産”にあやかって子孫繁栄を願って食す意味もあるようです。